8月1日津波避難のニュース・赤旗より

しんぶん赤旗2025年8月1日(金)

津波避難 猛暑・交通混乱 課題山積

体育館エアコンなし 福島・いわき

ロシア・カムチャツカ半島付近で、30日に発生した大地震により、太平洋側の広範囲にわたって津波警報が発表されました。各地の避難状況からは、課題が浮かびあがりました。(社会部取材班)

地震発生当初、最大3メートルの津波が予想され、津波警報が発表された福島県いわき市。避難所となった市立体育館「南部アリーナ」にはエアコンが設置されていませんでした。

同所を訪れた日本共産党の四家(しけ)智之市議は「あまりの暑さで、いつ熱中症患者が出てもおかしくない状況だった」といいます。30日の最高気温は37度と猛暑日でした。四家議員は「体育館内の気温は体感で30度ほど。扇風機が10台ほど置かれ、その周りに人が集まっていました。介護施設から避難してきた人も多く、ピーク時には200人ほどが集まっていました」といいます。

同市議団は東日本大震災以降、避難所の改善として体育館へのエアコン設置を何度も要望してきましたが、ほぼ未設置です。四家議員は「エアコン設置は喫緊の課題です」といいます。

菅野宗長同市議は「今回の避難は1日程度だったが、長期間となるとさらに危険だ」と指摘します。体育館などへのエアコン設置までの暫定的対応が必要だと強調します。「教室などエアコンのある場所への移動も考えられる。きちんと運用方針を定め、現場で柔軟な対応ができるようにする必要がある」

市役所に観光客殺到 神奈川・鎌倉

有数の観光地でもある神奈川県鎌倉市では30日、津波警報が出ると近くの海水浴場などから避難してきた観光客らが市役所に殺到しました。

同市の広報課によると、JR鎌倉駅からも近い市役所は指定避難所ではありませんが、一時避難所として緊急にロビーや議場を開放し、備蓄している水やビスケットを提供しました。1000人ほどが利用し、海外からの観光客も多く、市の職員はアプリなども活用し対応したと言います。

JR横須賀線などの運休が続いたため鎌倉駅からの帰宅困難者への対応として、同市は公用車を市職員が運転し、湘南モノレールの湘南深沢駅の近くまで輸送。約1500人を送り届けました。一方、市内の別施設も合わせて10人が一晩を明かしました。

日本共産党の吉岡和江鎌倉市議は「今回は平日の昼間で職員もいたため対応ができたが、津波の避難路の整備など、課題も多く見えてきた。教訓にしていくべきだ」と話していました。

避難の車で大渋滞に 静岡

30日、午前11時30分に津波到達予想が出た静岡県。静岡市は9万1130人に避難指示を出しました。日本共産党の内田隆典(りゅうすけ)静岡市議によると、避難指示が出ていた地域を通る三保街道は「大変な渋滞だった」といいます。沿岸を走る国道149号と150号は同日午前10時から午後6時45分まで通行止めになりました。

津波の影響でJRと静岡鉄道、路線バスは運行を停止。タクシー乗り場に行列ができた様子がニュースで放送されました。

清水区にある浪漫館というビルは避難ビルに指定されているため、近隣住民が避難してきたといいます。

広い沿岸部が津波浸水想定区域に指定されている同市。地震や津波から市民の命を守るために、民間事業者がビルに外付け階段などを設置する際に補助金を出す制度があります。内田市議は同市の災害対策について、「市の人口を考えれば万全ではない」と指摘します。3月に開院した「JCHO清水さくら病院」は津波浸水想定区域であるJR清水駅東口に建設。耐震補強が不十分な清水区役所も同駅東口近くへの移転が選択肢になっています。

共産党市議団はいずれの計画も津波浸水想定区域にあることなどから反対。市は、今後の開発が計画されている同地の「発展のため」として方針を変えていません。内田市議は「市が基本的に経済優先という姿勢なのは問題だ」と話しました。

対策が進み混乱なし 和歌山・串本町

紀伊半島南端の和歌山県串本町では、津波警報の発令(30日午前9時55分)を受けて全域に避難指示を出し、高台への避難を呼びかけました。31日午前10時45分に津波注意報が解除されるまで海水浴場を閉鎖し、コミュニティーバスも運休しました。

町内の海岸で最大50センチの津波を観測しましたが、被害は確認されていません。町は26カ所の避難所を開設し、合わせて約550人が避難しました。

同町は南海トラフ巨大地震の想定震源域にあり、全世帯に津波ハザードマップを配布。町役場と町立病院、消防本部、社会福祉協議会などの拠点施設を高台に移転しました。

4基の津波避難タワーと複数の津波避難ビルがあり、山の斜面にも緊急避難場所を設けるなど、最大17メートルと想定される大津波の襲来に備えた対策を進めています。

日本共産党の仲江孝丸町議(30日は公務で和歌山市に滞在)は、町に戻って把握した津波警報発令時の状況について「防災訓練のときよりも多くの住民が避難場所に来たという情報があります。役場には10人ほどの観光客が避難しました。第1波が到達するまでの時間が十分にあり、落ち着いた行動ができていました。交通渋滞などの混乱もなかった」と説明します。

エアコン設置率 自治体で開き

猛暑が続く今夏を直撃した津波で、災害時に避難所となる体育館へのエアコン設置が改めて課題となりました。

文部科学省によると、今年5月現在、公立学校の体育館の冷房の設置率は全国平均で小学校が22.0%、中学校が23.7%です。自治体によっては数%にとどまる県も多く、東京都の92.6%、大阪府の49.8%と大きな開きがあります。同省は2023年度から、エアコン設置工事の国庫補助を3分の1から2分の1へ引き上げています。

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